言の葉と道具

「Chromebook」や巷にあふれる「文章」に関することを書いていきます

【雑記】編集手帳のたんとうが変わったこと

文章を書いているときに、人の言葉や文章を自分の文章に引きたくなる、そんなことがあります。
引用のための作業手順を<どこの馬鹿>と説いた本がありました。


 ど …読書  
 こ …コピー
 の …ノート
 ば …バインダー
 か …カード 

読んだ本のなかでおもしろいエピソードをコピーする。コピーとはべつに気の利いた表現はノートに書き留める。コピーをバインダーにとじこんで、テーマ別の索引カードを作成する。
過日、当ブログでも紹介した、「編集手帳の文章術(文春新書)」で紹介された筆者である竹内政明氏の手法です。そして、作成したバインダーは、この本の執筆時(2013年1月)には300冊を超えていたそうです。(同書199ページ)。

それから今まで、バインダーは何冊増えたのか。

この本の著者でもあり、読売新聞1面コラム「編集手帳」の執筆担当でもある竹内政明氏が、その担当から退くという。
10月3日付の読売新聞(朝刊)で発表がありました。(webでの発表はこちら


体調を崩されていて療養に専念するとのこと。竹内氏の担当期間は2001年7月から約16年間におよびました。後任は清水純一氏になるそうです。

私は編集手帳の熱心な読者とはいえません(会社で読む程度)が、昨年の今ぐらいの時分、すこし意識的に、いくつかを自分のノートに書き写していたことがあります。

その中のひとつから、引用させてください。2016年9月7日の編集手帳です。

マドレーヌを紅茶にひたして口に含んだとき、遠い幼年期の記憶が隅々までよみがえる。全編を読みおおせたことのない身で口幅ったいが、フランスの作家マルセル・プルーストの長い長い物語『失われた時を求めて』である◆当方が口にしていたのは卵かけご飯と麦茶だが、記憶が突然よみがえる感触をささやかながら味わった。3日前、朝刊をひらいたときである。殺風景な学生寮の一室。よく通った定食屋のテーブル。理髪店の待合席…◆ファンは皆それぞれに ”両さん”と過ごした時間を、場所を懐かしく思い出しているだろう◆『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が終わるという。型破りな警察官・両津勘吉を主人公に、秋元治さんが40年間にわたって「週刊少年ジャンプ」に連載してきた人気ギャグ漫画である。漫画誌にとんとご無沙汰な身だが、青春時代の古なじみであるあの愛すべき、一本につながった太い眉に会えないと思うと、やはりさみしいものがある◆17日発売の号が見納めという。<月光や遠のく人を銀色に>(星野立子)。飛び切り明るい人の別れにふさわしく、その夜は満月である。


引用からはじまり、自らの記憶と、それを全体の話とむすびつけ、余韻を残して終わる。

ため息をつきながら書き写したことを覚えています。


両津勘吉は、1年ほどたって、ふらっと舞い戻ってきました。(産経ニュースリンク

氏の体調のご快癒を祈るとともに、文筆の世界に舞い戻られる時を、一ファンとして楽しみにしています。