【本】竹内政明の「編集手帳」傑作選 / 読み終えたくない、コラム。
新聞の一面、下側に存在するコラム欄は、多くの人が目にするものでしょう。新聞における、これらコラムの位置づけを「皺」に例えたのが、今回紹介する、『竹内政明の「編集手帳」傑作選』の著者、竹内政明氏です。昨年、竹内氏が編集手帳の執筆から退かれたことは、ブログ記事でもとりあげましたが、今月、傑作選が中公新書ラクレから発売になりました。
(参考:過去記事)
i-daigoro.hatenablog.com
本書の目次は次のとおりです
121の自薦コラムと30の未収録コラム。これらはどこから読んでもいいですし、ぱらぱらめくって気になるところだけを読んでもいいと思います。私はパラパラとめくって、一度本を閉じてしまいました。ああ、これ以上、竹内氏の「編集手帳」が増えることはないのだなあ、と。
前書きでは、現在の編集手帳の書き手(7代目)である清水純一論説委員がこの本のタイトルについて次のように述べています。
この傑作選のタイトルについても、先輩らしい前日譚があります。
『ヘタクソメ』
二〇一七年八月に体調を崩し、長いリハビリが必要になる前、こんな題を考えついていたそうです。編集者の方は腰を抜かしたことでしょう。
しかし結局、本のタイトルは表題のようになりました。私はおそらくこの本を度々開いては読んで、そして書き写すでしょう。編集手帳は、新聞社のなかでもひときわ文字数が少ないコラムです。朝日新聞の『天声人語』が603字に対して、編集手帳は458字であり、4分の3程度の分量しかありません。
原稿用紙一枚と少し。しかしこの短いコラムから、文章の展開の巧みさが、弱者に寄り添う優しさが、理不尽なことに対する静謐な怒りがあふれ、たくさんの読者の、頬に、口角に、眉間に、皺をつくったことでしょう。新聞のシワを自任する文筆家の、最後となるにふさわしい傑作選です。けれど、もう新作が読めなくなることは、ただ、さみしい。
読売新聞朝刊一面コラム - 竹内政明の「編集手帳」傑作選 (中公新書ラクレ)
- 作者: 竹内政明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/05/08
- メディア: 新書
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