言の葉と道具

「Chromebook」や巷にあふれる「文章」に関することを書いていきます

【言葉】ジャニーズとキス

フォーマットから大きく外れた文章は、読み手に大きな違和感しか与えない。そのお手本の一つではないでしょうか。

お酒を飲んで、被害者の方のお気持ちを考えずにキスをしてしまいましたことを本当に申し訳なく思っております。被害者の方には誠心誠意謝罪し、和解させていただきました


これは、女子高校生に対する強制わいせつで山口達也容疑者が書類送検されたとの報道に対して、ジャニーズ事務所が25日、ファックスでコメントしたものです。一読して、違和感を覚えました。「酒を飲んで、キスをして」なんてひどく直接的すぎる。いえ、もう少しちゃんと言いましょう。一企業がなんて無様なコメントをしているのだ、と。

ただ、次の日に行われた本人の会見までみるとその疑問が解けました。渦中の人物が頭をさげる。涙ながらの謝罪の言と、弁護士からは謹慎と被害者とは示談が成立している旨の説明があって。おまけに、被害者両親からのコメントまで添える。

上の事務所コメントにあった、「キス」「酒」「和解」に沿った展開です。
これで世間のタレントに対するイメージ低下を最小限におさえようとしているのでしょう。

しかし、この事務所コメントに限っていえば、そこまでする必要はあったのでしょうか。山口容疑者が「お酒のせいで」「キスだけ」をした。短い文章に事務所のシナリオが凝縮されているように読めてしまう。

そしてそこからは、実は語られていないことがあるのではないか。我々は本質から遠ざけれれているのではないか。そう行間から感じてしまうのは、私だけでしょうか。


「酒に酔って、16歳女子生徒に強制わいせつしてしまった」として暫時謹慎し、(おそらく)復帰する。

「酒に酔って、成人女性記者にセクハラ発言してしまった」として次官を辞任し、退職金まで減額される。

立場や被害者は違えど、この差は本当に興味深い。そして、「容疑者」と書くマスコミと「メンバー」と呼称するところが混在する。この違いは、いったいどんな力学にもとづいているのか。

内容ももちろんですが、80字足らずの事務所のコメントに衝撃を受けた。そんな、事件です。


(2018年5月6日追記)
山口達也氏がジャニーズ事務所との契約解除というニュースが流れてきました。上で記載した予想(しばらくして復帰)とは違った展開となりましたので追記します。