言の葉と道具

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【本】「外資系コンサルの知的生産術」は名前に負けない中身がつまっている

仕事にいきづまったとき、ビジネス書を手に取りたくなるときがあります。立ち行かないことばかりの自分に、なにかしらかのヒントとなることを期待して。

そうやって、ふらっと大型の書店を歩いていると、「外資系」「ハーバード」「コンサル」といった言葉がタイトルに入った本をふと手に取る。それだけで、すこし心に栄養がいったような気になってしまいます。

もっとも、買って帰って読んでみると、その効用は霧散するのですが。ただ、いくつかの本は、その期待に違わない、素晴らしいものでした。今日はその本から「外資系コンサルの知的生産術 〜プロだけが知る「99の心得」〜(山口 周 著 光文社新書)」を紹介します。

本書のターゲット

筆者はまえがきで本書のターゲット読者について、次のように述べています。

どんなにピカピカの学歴を持った頭脳優秀な人材でも、「動き方」を知らないとまったく知的成果を生み出すことができない(まえがきより)

つまり、方法論がなければ仕事は立ち行かないということでしょう。そして、本書を読むことによって得られる効果について以下のように書いております。

本書は、まさにこの点、つまり「知的生産のための心得」 について書かれています。この「心得」は、広告代理店と外資コンサルティングファームという、ある意味で「特殊な職場」において磨き上げられてきたものではありますが、知的生産にたずさわる立場にある人であれば、いろいろな気付きが得られるはずです。コアなターゲットとして想定しているのは、知的生産性を高め、自分が所属する組織や社会によりよい変化をもたらそうとしている三十代のビジネスパーソンです(同上)

本書の概要と気になったポイント


そして、知的生産をプロセス別に、「知的生産の『戦略』」「インプット」「アウトプット」「プロセッシング」にわかれて、行動をするための心得と、「知的ストックを厚くする」知的生産のクオリティ・効率を中長期的にたかめていく方法を説明しています。

「99の心得」というだけあって、上の切り口をもとに、99個の項目別に記載をしているのですが、かなり実践的な示唆に富みます。たくさん紹介したいのですが、次の2つだけ紹介します。

ある分野について勉強するのであれば、まずはマックスで五冊 という目安を持っておけばいい(第2章インプット 24.学習のS字カーブを意識する)


これはある分野の情報を得る際に、どこまでインプットすればよいかという視点から論じたなかでの言葉。個人的にもこの5冊という数値はしっくりくるような気がします。私自身、読書術関連の本を多く買いましたが、買い増しても学習効果はあまり高まらないように感じております……。

「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼を持つということです。 そしてこの選球眼を与えてくれるのがまさに「厚いストック」なのです。
(第5章知的ストックを厚くする 76.知的ストックで常識を相対化する)

イノベーションを生み出す上で「常識を疑う」ことについて、常識を疑う行為がコストがかかるという文脈から、知的ストックの重要性を述べての言葉です。知的ストックを厚くすることの効用を上記の切り口で紐解かれているのは斬新に感じました。

筆者である山口周氏の本を読むのは、この本がはじめてでしたが、率直にいってもっと昔に読みたかった(本書は2015年発行)というところです。社会人になりたての頃にこの本に出会っていれば、という想いを強く抱きました。もっとも、私の新入社員時代などは結構昔なので、本書は出版なぞされていないわけなのですが。

もちろん、私のような社会人になっただいぶ経つ人間にもかなり有用です。この本自体、新書ですから、軽い気持ちで読むことができます。「外資系コンサル」などというパワーワードに全く遅れをとることがない、名実そろった本です。